アニメ『出禁のモグラ』11話 感想

アニメレビュー

今回の見どころは、「善と悪」「価値観の基準」「悪いことはバレる」「モグラの謎」でした。

善と悪

個人の認識としての「善と悪」はかなり不安定で曖昧、ときに理不尽です。

社長の視点で見ると、自分と家族は正義であり「善」、自分たちを苦しめる周囲の人間は「悪」となる。相対的な考えで、善である自分たちの「正義」を邪魔する者は排除するという「正義感による排斥の論理」が成立します。

「自分たちが正義」という認識は、いじめを率先して行う人間によく見られます。相手を排斥しなければならないという歪んだ責任感があり、それが、社長の「悪者を倒す僕はヒーローだ」というセリフに表現されていますね。

「他人を苦しめることを肯定する人間の認識を変える」ことは容易ではありません。本人は正しいことをしている認識のため、周囲の忠告など理解できない。その「認識のずれ」を修正するには、認識の根底にある価値観の変更が必要です。

海外では「いじめる側が病んでいる」ということが広く知られており、いじめが発生すると、いじめている側の心の異常に対して心理的治療が行われます。

いじめを「悪者を倒す」行動だと信じている社長。その社長の精神が異常な状態であるということが、会話しているモグラの反応からも読み取れる展開で面白かったですね。

「いじめをする人は心に異常がある」この認識はぜひ日本でも広まって欲しいところです。

この後のモグラの反論がシンプル&ストレートで超絶爽快でしたね。

価値観の基準

社長にとって、価値判断の基準は母親でした。モグラが社長に向かって最後に「かわいそうな子」という言葉で締めているのも良いですね。

狭い世界(島)で、母親の価値観だけで育てられた子どもは、その価値観の中で生きるしかなかった。選択の余地がなかったという点で、確かに「かわいそう」です。

母親の権力が及ぶ範囲で安寧を得てきたという人生経験がすべての社長。そして、その境遇が幸せだと信じている。

社長対モグラのシーンでは、安寧を知らないモグラが同情され、果てには社長に嫉妬していると決めつけられしまいました。モグラはひたすら困惑していましたが、ゆがんだ認識がうまく表現されていると思います。

価値観の基準は人生を決めてしまう。だからこそ、広い世界で多くのものを学ばなければならないというメッセージがまた良いですねぇ。

悪いことはバレる

杏子さんのユイちゃんへの忠告「悪いことはバレる」が鋭い。社長よりも、自分たちの行動の現実を認識しているユイちゃんを、しっかり導こうとする杏子さんが最高でした。奥義が見たかったですねぇ。後ほど詳細は公開されるのでしょうか?

どうやら圧倒的な「真実の愛」に打ちのめされたユイちゃん。

このシーンでは、他人を力で服従させることで安寧を得ている一族だからこそ、心から信頼できる存在がいないということを暗に指摘しています。常に、力による服従をすり抜ける存在に怯え、恐れている。

権力者一族は強く見えて、もろい一面があることがここで分かります。

確かに、ストーリー冒頭で、島の外へ向かおうとしする八重ちゃんを異常なほど警戒していましたよね。

ユイちゃんに、奥義を使って真実の愛の存在を知らしめた杏子さん。杏子さんの助言に従って、ユイちゃんも外の世界を知ることになるのでしょうか?

こうしてみると人魚編は冒頭から終わりまで一貫して「閉鎖的な環境での偏った認識が、どれほど人生に悪影響を与えるか」ということを示唆しています。う~ん、すごい。

モグラの謎

11話は、モグラの謎が深まるセリフが多くありました。

モグラはなぜ、こんなに地獄に詳しいのでしょうか?
縄の秘密も明かされていましたね。そんなに丈夫な縄だったとは。

また、今のモグラにはない力とは何なのか?気になる!!
次回12話が今期最終話!楽しみです!

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