『地獄楽』8話では、あまり語られなかった各キャラクターの内面が描かれました。バトル中心だったこれまでと趣が異なり、「何のため」という理由が明らかになったことで、戦いの重さが変わったように感じます。
巌鉄斎の過去
自由奔放で豪快な巌鉄斎ですが、彼が剣に命を懸けるのは、永久に名を遺すことが目的でした。
名を遺すとは、自分の「生きた痕跡を残す」ということでしょう。自分が今生き、ここに存在することの証明。
無為に生きていれば、死とともに体は朽ち果て何も残らない。自分がそこに存在していたかどうかも分からなくなる。おそらく巌鉄斎は、それがたまらなく嫌なのでしょう。
彼は、自分が生きていた「痕跡を残さなければならない」ような気がしている。
きっと名を残すために死んでいった剣士たちは、そんな渇望を感じていたのかもしれないと思います。歴史上には、崇高な道に命を懸けた英雄がいますが、彼らはその渇望を行動に移しただけなのでしょう。
巌鉄斎の言葉には、そんな剣士の心が率直に表れています。
名を遺すために命を懸けることは、決して無茶でも無謀でもなく、彼らにとって、心からの望みだったのだと思います。
師の言葉
巌鉄斎は師の言葉に従い、剣の道を究めるために何かを集め増やすのではなく、不要なものを削り落とすことに目覚めました。
物事の本質を見極め、枝葉末節を派生させる根本にあるものを知る。
桃花(タオファ)との戦闘のラストでの、巌鉄斎の誇らしげなキメ台詞も良かったですね。
菊花の想い
8話では、敵方である天仙の内面も深く描かれました。
美しい花々が咲き乱れる極楽のような世界で、辛い修行が続く日々。
天仙のなかで、比較的人に近い感覚を持つ桃花と菊花。
他者の痛みへの想像力と共感。その痛みを自分が受けたらどう思うのか。
優しさや人間性の実態は、他者の痛みに対する想像力と共感性の有無ではないでしょうか。桃花と菊花は、それが他の天仙たちよりも強かった。
しかし、他者の痛みを自分の事として感じる共感性が、やがて二人の心を蝕み始める。解決の糸口が見えないまま続く修行。
生きる目的と対極にある「無意味な行動」。完璧な不老不死への疑いは、これまでの修行の意味を無にする。激しい怒りと焦燥。
桃花を守るために
菊花は心のどこかでは不老不死を求めることの無意味さに気づいている。しかし、逃げ出すことのできない現実に目を閉ざすしかない。菊花は桃花の笑顔を守るためだけに目前の脅威と闘おうとしている。
気になるのは、二人が救いを求めているということです。彼らの苦しみの解決ために、敵、味方の壁を越えることはできないのでしょうか。
桃花と菊花の戦いは、どのような結末を迎えるのでしょうか。救いのある展開であることを願います。
