6話は、かなり思うところの多いお話でした。『出禁のモグラ』は、見えない心理を言語化しているところが面白いですね。
駆け付けたモグラの説得
病院に駆け付け、意外な方法で危機を解決(?)したモグラが、納得しないマヤを説得する言葉が深いです。斬新すぎる。これまでにない正論が展開されました。
言葉は「きっかけ」。原因は他にある
不幸の原因、ミヤの苦しみの原因は一つではないというモグラの考察。
確かに親戚からの残酷な一言は「きっかけ」になったかもしれない。しかし、その言葉によって引き出された思いは、これまでの様々な状況と要因の積み重ねの結果ということですね。
本人の苦しみは他者には救えない
ミヤを救えないことを素直に詫びるモグラ。誠実ですよね。
続けて語るモグラの言葉には、ミヤ本人の苦しみは、周囲の人間にはどうにもできない。本人が乗り越えるしかないということを示唆しているように感じました。
また、マヤの行動に干渉する理由もモグラらしいです。
妹を救おうとするあまり、自分が悪者になろうとする姉。人を救いたいという正しい思いがあるのに、罪を犯して欲しくないといった感情を、ストレートな言葉でモグラは訴えていました。
モグラは論理的で分析好きな一方、ここぞというときに感情的になるところが魅力ですね。
突然の過去
突然始まった真木兄弟の過去話も良かったです。
ほんの数カ月や数年早く生まれただけなのに、兄や姉は弟や妹を守ろうとします。どんなに小さくても、お兄ちゃんはお兄ちゃんなんですよね。不思議です。
幼い自分に弟や妹を守る力が無くても、困難に立ち向かい守ろうとする。実際に真木は、そのときの困難に負けてしまったけれど、モグラはそれを褒めたたえます。そのときの言葉も印象的でした。
少なくとも、八重ちゃんに話をするということは、梅ちゃんはその時のモグラの言葉を覚えていたんですね。
兄弟は互いをどう思っているか
真木兄弟のように、互いの長所短所を分かっているけど、互いがどう思っているかを話し合う機会がなく、すれ違うケース。あるあるですよね。
八重ちゃんが、そんな2人の気持ちを理解できたことは、今後の真木兄弟にとって大きな一歩だったのではないかなと思います。
マヤとミヤ
マヤとミヤのやり取りが繊細で、実にリアルでした。フィクションを通して真実を表現するという某文豪のようなセンスを感じます。
再会シーンで、ミヤの最初の問いかけに言葉を失うマヤ。そのときの朴訥とした真木のセリフには優しさがありました。
幸福に「~だったら」という条件を付けないことの大切さも、含んでいるのではないかなと思いました。
ミヤの答え
意外なほどマヤに明るく答えるミヤ。ミヤが苦しみを自分自身で乗り越えたことを示した瞬間、マヤの苦しみも溶けるように消えます。
必死に強くなろうとして、大人の姿になっていたマヤが、小さな元の姿に戻っていく。つまり、マヤを現世にとらえていた未練も同時に消えたわけですね。
ミヤが困難を乗り越えたきっかけは、あれほど依存していた存在(梅ちゃん)に、「嫌われるかもしれない」という恐怖を乗り越えて、すべて語ったことでした。
「語る」という行動によって、自分を客観的にみることができたミヤは「このままではいけない」と気づき、伯父に一つのお願いをする。完璧なラストでした。
話を聞くのが得意な弟
6話では、弟の性格という伏線が回収されています。女の子が好きという大きなテーマによって、そのほかのすべてのフィルターが除外される梅ちゃんだからこそ、ミヤと対等な立場で、相手を傷つけることなく話を聞き取る事ができたんですね。
悩んでいる人の話を聞くというのは、根気が必要で、相手に対する関心や理解が必要ですよね。どういう状況で、どう感じたのか、どうしたいのか、共感し受け止めながら話を聞くことで、相談している側の気持ちも次第に整理されていく。
『出禁のモグラ』は、ものすごくキャラ設定やストーリー構成が練られていて考察が楽しいです。
猫附家の人々
ものすごく濃いキャラクターの登場です。登場人物が多いわりに、類似したキャラがいない『出禁のモグラ』すごいですね。キャラが立っているとかのレベルではないですね。
モグラのイキイキとした「話を聞け」アピールも癖になる面白さ。梗史郎の態度に改善を求めるモグラに対して、子どもの可愛いさを語る藤史郎。藤史郎LOVEを全力で訴える妻。面白い。。。
すんごい税理士がいるかもしれない
「猫附家はお金持ち」と、ちょこちょこモグラが語っていましたが、本当にかなりの豪邸でした。
しかも、税に関する本が自宅にあるモグラだけに、経費の家事按分チェックに余念がありません。住居がどの程度の割合で業務に使用されているかを聞き出そうとしています。
また、藤史郎が「確定申告が面倒くさい」と言っていたのは「税理士とのやり取りが多くて面倒くさい」という意味だったのでしょうか???
インボイスとかありますからね。出張も多いし。経費の領収管理だけでも膨大なのでしょう。すんごい税理士と契約しているのかもしれませんね。
共感と信頼
続いて、すごい人間観察発言が飛び出しました。共感性ですね。
作中でも藤史郎が説明していますが、人間は共感を心地よいと感じるようです。つまり、共感してくれる人に対して好意的になるということですね。
共感するには、相手がどう思っているかを正確に推測する能力が必要だと思うのですが、杏子さんはその能力が天才的なようです。
確かに、人望がある人というのは共感性が高く、相手の人格や能力、心理を正確に見抜いていますよね。現実でも組織の長には、適材適所へ人材を配置する能力が優れている人が多い気がします。
また、自分に共感し深く理解してくれる人に、人は逆らえないですよね。例え逆らっても、なぜ逆らっているのかを理解されているわけです。そうなると人間は無力です。絶大な信頼を相手に対して抱くことになる。そのような人に出会うことは稀ですが、稀だからこそ心酔することになる。
この共感性と信頼(依存)の関係を、ホラータッチなキャラクターを登場させ、どのように描くのか?
7話に期待です。