8話の注目ポイントは、本好きが思わず笑う小ネタ、モグラの心に宿る安息と狂気、線引きのススメ、の3本です。
本好きが思わず笑う小ネタ
『出禁のモグラ』8話の冒頭は、モグラの頬を伝う汗に、やや深刻さを感じたのですが、軽い笑いで誤魔化されましたね!
生粋の本好きらしいモグラ。「本なら何でもいい!」と言って捨てられた本を集めている様子。
本好きな人なら「わかる」その気持ち。自分の知らない知識を得る楽しさ。価値ある情報を得るときの満足感。そこに本があったら、どんなジャンルでも一度は読む。本好きはそんな感じなので、「何でもいい」というモグラのセリフに共感しきりです。
自己啓発書ネタ
同じ自己啓発書が◯冊あった話も、わかる人にはわかる小ネタですよね。あるあるです。
自己啓発書を読むぞと決めた初心者が、必ず通るであろう、某有名な著者の数字が入ったタイトル。あれや、これや、それです。
読み終わったら売る。ベストセラーだから買い取るお店にも複数在庫がある。ベストセラーだから、モグラが同じ本を拾う可能性も高い。設定が面白すぎるんですよね。しかも、リアル。あ〜!あれね〜!と分かる共感ポイントが癖になります。
なぜモグラは本好きなのか
なぜモグラが、それほど「本」に飢えているのか。考えてみれば、実に納得できる設定です。
モグラが本に対して貪欲になるのは、戦時中から戦後にかけての、一般的な感覚に近いと思います。学ぶ機会が奪われ、情報が奪われ、娯楽がない。何もない。その期間をずっと1人で生きてきた。
人は、体を生かすために食物が必要なように、精神にも栄養が必要だったりします。
心の栄養は何かというと、書物。精神的な満足感を得ることは、生きる上で大切です。しかし、精神的な満足感を与える良書が、必要不可欠なものであることは、あまり意識されることはありません。
それが、目に見える形で現れたのが戦後です。書物に飢えた人々は、戦後こぞって本を買い、集めた書物を大切にしました。紙や表紙の材料すら足りない当時、本は貴重品でしたよね。
現代はスマホで必要な情報はいつでも手に入り、小説や映画、ドラマ、アニメ、漫画、スポーツなど何でも観ることができます。
しかし、モグラはスマホを持っていない。自宅ではラジオを聞いたり、本を読んで過ごしているようです。
もしかすると、そんな戦時中の精神的な飢餓状態の影響が、現代のモグラを本好きにしたのかなと、個人的に感じました。
モグラの心に宿る安息と狂気
『出禁のモグラ』は、回りくどい伏線がなく、むしろ情報開示をすることで、読者や視聴者に「なぜ?」と興味を持たせます。すごく独特で斬新なストーリー展開ですね。
8話では真木くんの視点から、モグラの複雑な心境を言語化していました。
安息の場所がもたらす狂気
真木くんが気づいた抽斗通りの目的。そこには「幸福の基準は何か」というテーマが隠れています。
何不自由ない生活が幸福なのか?という問題です。一見何不自由ない場所、居心地の良い場所が心を蝕むという矛盾。
それは、生きていると言えるのか。
ある海外の高級住宅地では、素晴らしい伴侶、可愛い子供、十分な収入、居心地の良い家を持つ人が、たまらない心の虚しさで病んでしまうという話を聞いたことがあります。
すべてに満たされた生活だけでは、幸福感を得られない、むしろ苦しみを感じる。生きているという実感を持てない。
この例が示すのは、幸福は、物や環境では得られないという事実です。では、幸福の実態は何か、となりますが、それはまた別の話題なので割愛します。
モグラは、一定の安息を得られる環境にありながら「地獄」だと感じている。一見楽天的な言動は、言葉にならない苦しみから発する狂気に近い。
ここまできて、これまでのやや常軌を逸したモグラの言動に合点がいく。
まさに狂気が漂う雰囲気を持っています。
モグラをそのような境遇に落としているのは、一体何者なのか。モグラを罰しているのは誰なのかが気になるところです。
線引きのススメ
これまで、モグラの口から何度も自身の行動に「葛藤」している事が語られてきました。
しかし、8話で登場した「線引き」をするべきだという言葉は、モグラの心を揺らします。
モグラも心では分かっている。でも、実行ができない。
行動と心理が一致しない。だから、ダメだと分かっていても、いつも自分の身を削ってしまう。そして、カンテラの火は貯まらない。そして、長い時が過ぎていく。
モグラを抽斗通りの境遇に落としている人物(?)は、それを見越しているようですよね。これはあくどい!
一体何のため?
謎が謎を呼ぶ8話。ホラーなキャラと見た目が激変した同級生も登場し、ますます気になる第9話。来週も楽しみです。