忘れていた昔のことを思い出したので、徒然なるままに記録。
お彼岸に種籾を水に浸ける
寒さが和らぐお彼岸の頃、おばあちゃんが種籾を水に浸けていた。
兼業農家が多い地域で、私の家も自宅用のお米を作っていたから、なんとなく覚えている。
庭に苗箱を並べて、土を入れ、種籾を蒔く。たっぷり水を掛けて、重くなった苗箱を積み上げてシートをかぶせて保温する。
ときどき水を追加して、苗を育てる。
春の梅が音もなく散って、蛙の嬉しそうな声が聞こえる頃には、苗箱に蒔かれた種から稲の芽が出る。
芽がでたら田んぼに苗箱を並べて、周囲に土を盛ってプールのように水を満たして育てる。
この頃はまだ寒いから、ワイヤーみたいなもので小さなビニールハウスを作って、苗が15センチくらいになるまで育てていた。
今思うと、随分手間のかかることをしていたんだなぁ。
でも、育て方を改良したから、これで収穫が倍になったらしい。
カエルの卵
雨が降った翌日には、田んぼに水たまりが沢山あって、その中にカエルの卵があった。
うちは無農薬で田植えの直前まで、田んぼをかき混ぜなかったから、普通に田んぼの中を歩き回れて、よくカエルの卵を見に行っていた。
だいたい雨が上がると、数時間で水たまりの水がなくなって、卵は干からびてしまう。
だから、バケツに沢山カエルの卵を集めて、外にある水道の近くの日陰に避難させていた。
卵が多すぎてバケツが足りなくなると、水たまりに水を運んで卵を救助したけど、全部は救えなかった。
数日経つと、避難させたバケツの卵から、沢山小さなオタマジャクシが孵る。
オタマジャクシや卵は、田んぼの間にある流れが緩やかな水路に戻したりした。
タニシが気持ち悪い
タニシもバケツに集めたけど、殻と体の間から小さくて透明なヒルみたいなものが出てきて、バケツの中を泳いでいてゾッとした。とても気持ち悪い。
「生き物にはすべてバイ菌や寄生虫がいるから、触ったら必ず手を洗う」という家ルールが身に染みて分かった出来事だった。
金色のドジョウ
雨上がりの庭に、金色のドジョウがいた。
なぜ金色だったんだろう。庭にいたのは田んぼから溢れた水に紛れて流れてきたのだと思う。
今ならSNSに上げるけど、あの頃は「すごい!金色だ!」と思うくらい。
金色のオタマジャクシもいた
金色のオタマジャクシもいた。ドジョウと同じく、一度しか見ていない。
突然変異だったのだろうか。
レンゲソウとシロツメクサ
家にはレンゲソウが一面に生える田んぼがあって綺麗だった。
アニメに出てくる、お花畑に寝そべる体験ができた。でも毛虫がいることに気づいてからしていない。
シロツメクサが沢山咲くのは、梅の木の下。
毎年四つ葉のクローバーを探した。花が咲くと、シロツメクサの花冠を作って遊んだ。毛虫にはすごく気をつけていた。
シロツメクサの花束も、花冠も、帰ってきて玄関においておくと、1時間くらいでしおれてしまう。
なぜか、玄関に置いてしおれた花の姿が強く記憶に残っている。多分、その記憶の後は花を摘んでいない。
梅の枝
梅の香りが大好きで、毎年家の隣に咲く紅梅と白梅を楽しみにしていた、花が咲くと、花に鼻をくっつけて匂いを嗅いでいた。
我ながらおかしなことをしていたけど、そうすると、とても良い匂いが満喫できる。秘密だけど、誰もいないときは今もやっている。懐かしい香り。
梅の枝は、梅の木に枝をくださいとお願いして貰っていた。梅の木は枝を折られたら痛いのだろうか。きっと痛いのだろうと、子供心に思っていたので、許可を取っていた。
それでも、やっぱり自分だったら嫌だなと思って、枝を折るかわりに鼻を花に埋めて香りを楽しむという方法を選んだ。たしか、そう。
ピーピー草
田んぼにはピーピー草というものが生える。
小さな穂を抜いて、筒状になった茎を吹くとピーピー鳴るから、ピーピー草。
毎年吹いていた気がする。今は無理。なぜ、あの頃は雑草を口に入れられたのだろう。子供の無知は恐ろしい。
藁で作ったプール
お米を作っているから藁が沢山あった。家の脱穀の機械が古かったからだろうと思う。
今のように機械で粉砕していなかったから、藁が沢山残る。藁は贅沢な座り心地のソファやベッドになる。
藁の上で青空を見るのが気持ちいい。最高のベッドだった。軽くて乾いていて柔らかい。
夏は、大人が抱えるほどの藁の束を庭に8個持ってきて四角に並べて、大きなビニールシートを掛けて、真ん中に水を貯めるとプールになる。
使い終わったら、水を庭に流して片付ける。
露草の青
夏の朝のラジオ体操。
道端に咲く、朝露で濡れた露草。
驚くほど鮮やかな青。大好きだった。
金色に波打つ稲
秋になると、稲が風に波打つ。金色の海原。あの頃は今よりも寒かった。数日で山が紅葉する。
雪虫が飛んでくると、雪が降る。小さな綿毛を付けた雪虫をよく探していた。
栗拾いをしたり、籾殻で焼き芋をしたりする。
クリスマスの準備
クリスマスの準備は1ヶ月前からする。
折り紙を買ってきて、細長く切って、毎日折り紙の鎖みたいなのをコツコツ作る。
たくさん作ってクリスマスイブに部屋を飾る。
ツリーは山から切ってきた本物のモミの木。
ツリーの飾りは買ってきた気がする。クリスマスの飾りセットがあった。
お父さんが帰ってきて、すごいな〜と褒めてくれる。そんなクリスマス。懐かしい。
青白い雪景色
街灯も限られた場所にしかないから、一面の雪景色は青白く輝いていた。木々のトンネルに霧が立ち込めると幻想的。
満月の夜は、驚くほど明るい。
田舎に住んでいて良かったと思う美しさだった。
澄んだ空に浮かぶ真っ白な月、凍りつくような星々。真っ白な雪に覆われた幾つもの田んぼ、その向こうの黒い森、山。
そして、静寂。
忘れていたこと
忘れていたことを思い出したら、豊かさとはなんだろうかと、あらためて感じた。
裕福な生活ではなかったけれど、自然の移り変わりを肌で感じ、四季を楽しんでいたあの頃は、とても幸せだったと思う。
今のようなスマホもネットもない時代。
少し、ネットから離れて周囲を眺める時間を持つのも良いかもしれない。
